専門エージェントから見る中学高校留学の現実と難しさ

この記事のポイント

1. 会話の壁は資格では越えられない
2. 理想と現実の違い
3. 精神的な理解力
4. まとめ:難しさは経験値+精神力へ

3. 精神的な理解力

先ほどの「理想と現地との違い」にも関係する部分になるが、留学には「精神的な部分での理解力」がとても大切になる。これは生まれてからの経験や教育によるものも多いため何かやったからといってすぐに変わるものではない。この問題を簡単に言うと、自分の中の「常識」が他人にとっての「常識」ではない事に対する怒りや苛立ち、である。

この「常識」というものがやっかいで、中学高校留学をする学生は一般的に12歳から17歳。中学生高校生の年齢の「常識」はとても世界が小さいことがほとんどだ。自分の仲の良い友達内だけの常識、自分の家庭の中だけの常識、それが全てのその子の常識になってしまっているため、よその家の普通や、他の人の普通、が受け入れられず「おかしい!」と思ってしまい、自分に関係のある事の場合「どうしてこうしてくれないの?」と苛立ちを覚えてしまう。そのため、ホストファザーが食事をつくって、マザーは何もしないと、「ありえない!」、水を節約のためにシャワーを10分で出るようにと言われると、「ケチだ!お金がない家だ!」、朝ごはんも洗濯も自分でやるようにいわれると、「お金を払っているのに!」と受け入れられず不満につながってしまう。そこだけ部分的に電話で子供から聞いた保護者の方もなんとなく同意してしまうことも多く、同意されたことにより自分の考えが正しい、あの人たちがやっぱりおかしいんだ、とおかしいと思っていることに自信を持ってしまう。気持ちはとってもわかるが、それぞれマザーがご飯を作らない場合も、シャワーの時間制限も、朝ごはんや洗濯についても、それぞれの国、家族、環境、地域の中では普通であり、それぞれに理由があったりする。

これは中学生や高校生にとって、「だからそう思うな」と言われても難しい話だとおもう。なぜならその子たちの常識はその子達が生きてきた年数と経験してきたことで成り立つからだ。数回のトレーニングや練習でどうにかなるものでないが、唯一出来る事とすれば、日ごろからたくさんの人と関わり、たくさんの経験をする事だ。日本にいるころから年齢問わずたくさんの人と出会い話をし、他の人の考え方や価値観を聞くことで、自分との違いやそれぞれの常識の違いなど何かを感じるはずである。お父さんが主夫をしていても、子供たちが毎日洗濯をしていても問題はないはずだ。もちろん奴隷のように働かされて本来勉強しなければならない時間が全くなくなってしまうなら話は別だが、私の留学業界人生の中でそこまでのケースは一つもない。こういう考えもあるよ、と親や先生から聞いただけでは子供にはあまり響かない事が多い。自分が知っているそれとは異なる考えがある事、異なっていても良いという事を身をもって感じる機会を増やすことが、一番子供たちの心に残り感じるものが多い。

オーストラリアは移民も多く、たくさんの文化が混在する国。宗教的な考え方、男女性別の考え方、子供のあり方や教育方法、家庭の中での役割など、様々な点で日本の一般的と言われる常識とは異なる。受け入れられず否定し続けてしまう子もいる。自分と異なる考えはあるが、その人たちと同じ考えになる必要はない。ただそういう考え方や個々それぞれの普通がある事を否定せず受け入れる気持ちをもつ事が、留学にとってとても大切になる。

4. まとめ:難しさは経験値+精神力へ →

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